第三次めでブロ

めでたいブログ

着ぐるみの運用、難しいぞ

前回記事にてめでぞうくんの着ぐるみを製作したことを報告しました。

極論を言えば着ぐるみは金さえ払えば発注できるし、なんなら海外通販を探せば著作権的にヤバそうなものを含めて1万円前後で入手できてしまいます。

着ぐるみに払うお金、およびその金額を払う・着ぐるみを保管し続ける勇気があれば誰でも保有できるものとなっています。

一流海外通販サイトAli Express様にて着ぐるみを検索したときの例

今回のテーマは、そのお金と勇気を支払った先に得られるものの話です。

本記事ではなるべく着ぐるみ一般論で書くように努めています。

便宜上めでぞうくんと呼んでいる箇所は自分のキャラに置き換えていただき、一体型など構造が異なる着ぐるみの場合にはサイズ・パーツ数などを自分のキャラと比較しながら読んでいただけると良いかと思います。

いわゆる「中の人」目線の記事なので、メタいのが苦手な方は気をつけてください。

  • ちなみに、めでぞうくん本体(イデア)は魔界にありこの着ぐるみはその姿を投影したものに過ぎません
  • つまり何が言いたいかというと、めでぞうくんに限って言えばメタだとか中の人だとかそういう話ではなく、あくまで魔界の姿を投影した仮想体なので中に入って何をしても魔界側との関連性は無いということです

みんなが思っているよりもデカい

着ぐるみの収納場所というのは予てより不安材料の1つでした。

実家暮らしの頃でも不安だったのに、そんな荷物を抱えると想定せず借りた一人暮らしの狭い貸家であれば尚更です。

今回発注前の見積もり時に収納面積を確認したところ、「一般的な想定で60cm×4辺の合計240cmの床面積が必要となる」という回答をいただきました。

よほど大きなパーツを使用しなければ、めでぞうくん以外の着ぐるみでも大体同じぐらいかと思います。

事前に大体のサイズを聞いていても、いざ届いてみるとかなり圧倒されます。

あと床面積だけ聞いていて体積を確認するのを忘れていたので、垂直方向の空間が想像以上に削られました。

抜け殻のエレジー

厚めのダンボールで届いたためこのまま保管することもできましたが、運搬を考えるとちゃんとしたケースを準備したほうが良いと考えました。

私はアマゾンで150Lのコンテナを2台購入して縦積みすることにしました。

結果、部屋に自分の肩ぐらいの高さに聳え立つ塔が建立されたため、今近くのトランクルームを必死に探しています。

リモートワークもする作業スペースとベッドの間にこんなものがある生活

少し脱線しますが、トランクルームには屋内型と屋外型の2種類があります。

屋外型の方が安い反面トランク内が過酷な環境(湿気、気温など)になる場合があり、屋内型は金を積んでそこを解消するようなイメージとなります。

実際に借りる際には家からの距離や空き状況も加味しなければなりませんが、着ぐるみのような繊細なものを収納する際にはなるべく屋内型を選ぶのが良さそうです。

  • あと、屋外・屋内どちらの場合も扉や階段の辺りでデカい箱が物理的に通らない可能性があるので内見は行ったほうが良さそうです
  • 車での運搬を考えている場合は、特に屋内型の場合に車を近くに止めて積み下ろしできるかというのも重要な気がします

ちなみにモノタロウには着ぐるみ用のプラダンボールが売られていました。

値は張りますがなんかのイベントでこんな箱を見たこともあるので、自治体など一般的にはこういった箱で保管しているのかもしれません。

高いけど使いやすそうではある

想像より遥かに見えない・動けない

人が着ぐるみを入手したときにまずやること第一位は間違いなく「とりあえず頭を被ってみる」だと思います。

  • その他ランクイン
  • 「腹の部分を叩いてみる」
  • 「頑張って縦積みして写真を撮る」

で、被った瞬間に視界が暗闇になって全てを察しました。

視界のイメージ(実際はもっと狭い)

めでぞうくんの場合、山なりの線状となっている目の部分がメッシュ状になっており、そもそもの視界が一般的な着ぐるみよりも狭い気がしています。

さらに、被った際の「自分の目」の位置とメッシュ部がややずれており、山なり線の端の方しか視界に入らず、結果的に点程度の視界しか確保できない状態でした。

もっと言うと、被った際に「顔」と着ぐるみの間に20cmほど距離があり、感覚としては「遠くの方の小さい点」レベルとなってしまっています。

巷でよく「探偵が着ぐるみに入って犯人捜査する」みたいな描写がある漫画・ドラマ等がありますが、このレベルの視界では人が前を通過したことが分かれば御の字でしょう。

世の中には着ぐるみ内部から外の景色を見る用のカメラシステムもあるため、本格的に活動する際には改めて検討してみようと思います。

オフィス向け通販サイト インターショップのエア式着ぐるみのページ

視界もさることながら動きも思ったより制限されます。

めでぞうくんの場合は特に下半身が大変でした。

構造としては前述のとおりズボンを穿いてから胴体部に足を通すのですが、この胴体が太ももあたりまで覆うようになっており、股関節の可動域が制限されます。

歩く分には(かなり歩幅は狭くなりますが)問題ないものの、少しの段差を上る場合でも足が上がらずかなりきつく、階段は1段1段必死によじ登るような進み方になってしまいます。

「上る場合」と書きましたが、下る場合にはどうでしょうか。

めでぞうくんの胴体は魚のため、尾ひれが背面の腰より下に突き出ています。

これが非常に厄介で、段差を降ろうとすると後ろに思いっきりぶつかります。そのためカニ歩きか後ろ歩きが要求されて難易度が跳ね上がります。

上下の移動を伴う移動の際には可能な限りスロープやエレベーターを使うのが良さそうです。

人間には存在しない器官が50cmぐらい出てるし、足は短い

この尾ひれのように背中側に突き出ているような構造が人間に無いため、距離感が掴めないせいで段差以外でも人や物にぶつける危険が高く、慣れるまではかなり時間がかかりそうです。

尾ひれが無い他のキャラの場合でも、人間に無い装飾を有している場合はその可動域をつかむのに相当なコツが必要となると思います。

一人で着ることがほぼ無理

当初の企てでは休日に公民館に着ぐるみを運んで、一人でガンガン動画撮影をしようとしていました。

しかし、届いてから冷静になって考えたら一人でどうやって着るんだ?????ってなって頓挫しました。

着ぐるみには種類や形状による作りの差があるため一般化はできず、以下ではめでぞうくんを例にします。

めでぞうくんは頭部(象)、胴体+腕(魚+人)、脚部ズボン(人)、手袋、靴という分かれ方をしており、恐らく少し複雑な方ではあると思います。

  • 着用順は特に決まりはないようですが、ズボン→靴→胴体→頭→手袋 というのが現状しっくりきています

胴体は背面側にファスナーが付いている普通のタイプです。ファスナーを隠すようにマジックテープ月の背びれが左右に付いており、ファスナーを閉めた後でマジックテープも閉じることで背びれが立ちます。

この機構はファスナー隠しにもなっており見た目は非常に良いのですが、仮に自分一人で何とかファスナーを閉められてもマジックテープを綺麗に合わせるのは非常に困難です。

また、頭部分も顎で固定するバンドの調整が難しく、頭を被って視界の悪い状態では向きや角度などが正しく装着できているかが分かりません。

その後で手袋を手繰り寄せて装着するのも一人だとキツいです。

着用まではどうにかして1人で済ませたとしても、問題なのはその後です。

上記のとおり着ぐるみは視界が狭く動きづらいものが多い上に、その状態で小さい子どもが周りにいる場所で活動することが多いです。

その状態で不用意に手足を動かして子どもに当たってしまったら

また、周囲だけでなく「中の人」が怪我や熱中症など危険な状態となる場合もあります。

このように1体での行動はパフォーマンスはおろか移動すら危険が伴うので、アテンドと呼ばれるスタッフの方が同伴で行動してサポートを行っています。

今まであまり気にしていませんでしたが、通常のイベント等では必ずアテンドが付いているようです。

通常アテンドの方はまるで司会のように場を仕切るか、逆にまるで一般人のように影を潜めるため、明らかに「あ、この人着ぐるみの誘導してる!」とはならないように振る舞っています。

  • 舞浜や多摩、此花で活躍されているトッププロはこの限りで無さそう

アテンドのサポート範囲は移動中だけでなく、キャラが人前に出ている時間に起こり得ることすべてです。

例えば、喋れないキャラが一般客とコミュニケーションを取る場合の橋渡しとしてキャラの気持ちを代弁したり、順番待ちの整理も行う場合があります。

また、世の中を斜めに見始めたキッズやイキった大人が攻撃してきたり、着ぐるみの「中」を暴こうとしてきた場合に守ることも必要です。

これらを視界が悪く行動範囲も限られるキャラが行うことは不可能なので、仮に1人で着用できたとしてもイベントへの参加は2人以上で行うのが望ましいです。

活動限界がある

着ぐるみというものは、当然ながら外から中が見えないようになっています。

通常は首から下はすべて覆われており、頭部も目や口の部分のメッシュで最低限の視界や呼吸のみが行えるのみの構造となっている場合が多いです。

その結果、内側は熱や湿気が逃げず温度が上昇し続けるサウナ状態となります。

  • 実際、動画撮影のときに着用して一通り動いてから脱いでクーラー浴びたらめちゃくちゃととのった

聞くところによると、着ぐるみの連続着用は30-45分が目安となっており、ベテランの方でもこれを超えるとキツいらしいです。

また、脱いだ後また着用する場合は最低30分の休憩を望ましいとされています。

ウルトラマンは3分、エヴァンゲリオンは5分が活動限界なことを考えると、それより長いとは言えやはり人が同化して活動するものは時間制限があるようです。

  • ググってたら「着ぐるみに2時間連続で働かせたらやばいですか?」とか質問してる知恵袋が出てきて怖くてちびっちゃった

2013年の「ご当地キャラフェスティバルin新神戸」&「タボくんバンドREVOLUTION'13-兵庫新神戸-」サイト

この活動限界は人前でパフォーマンスする時間だけでなく、着用から脱ぐまでのトータルの時間となります。

45分というのは意外と短く、移動を考えるとまともに人前に出られるのは長く見積もって30分程度になります。

ステージに上がる場合には30分以上の企画に参加するのは難しいですし、一般客と交流する場合にも「ふれあいタイム」などのように予め時間を決めておくか途中交代が必要となります。

上記で引用したゆるキャライベントのタイムテーブルでも、全企画が25分もしくは30分で設定されています。

「キャラクターらしさ」を出すのが大変

これは着ぐるみの運用を超えた話なので本記事では割愛します。が、これもなかなか大変です。

テーマパークのキャラがいかにプロ意識をもって一挙一動を繊細に表現しているかと言うのを身をもって感じました。

あとは動作が着ぐるみという形に変換されて出力されるため、「中の人」は大げさ気味に動かないと傍から見てて何も分からないこともあります。

  • 調べたら「プロのアクターによる演技指導講座」なるものまであった

必要なもの・あるといいもの

着ぐるみにとって最大の敵は湿気、そして着ぐるみを着る人間にとって最大の敵は中の温度です。

互いに譲り合うことで双方にとって快適な着ぐるみライフを過ごしましょう。

着ぐるみに限らず、湿気は繊細な器物にとっては大敵です。

着用後に正しい処理をせずに収納しそのまま放置してしまうと、匂いや不快感の原因となるだけでなくカビや雑菌の繁殖により着ぐるみ自体が駄目になってしまいます。

そのため、サーキュレーターを大きいパーツの個数分用意して使用後はすぐに中に突っ込んで十分に乾燥させてから収納するのが良いとのことです。

私は元々所持していたものに加え新規で1台購入し、計2台でしっかり乾燥させました。

人間が生物である以上湿気を抑えるというのは不可能なので、せめて汗が直接付かないような工夫をすると着ぐるみも長持ちします。

特に頭部は開口部も少なく湿気が溜まりがちなので、私はワークマンでヘルメット用のインナーキャップを購入して着用しました。

また、喋るキャラの場合は唾の付着を避けるためにマスクをしても良いかもしれません。

着ぐるみ頭部のメッシュ部分から「顔」が見えてしまうことを防ぐために黒マスクをするケースもあるようなので、こちらの対策も兼ねて一石二鳥です。

ただ、マスクをすると息苦しくなったり余計暑くなってしまうため、キャラの構造に応じてうまいことやるで良いかなと思います。

首から下も同様に、汗の付着に気をつけつつ涼しく動きやすい格好が望ましいです。

それに加えて首から下げるタイプなどコンパクトな冷感グッズを装着できると心強いです。

売り切れていて試せていませんが、以下のような無改造で着ぐるみに装着できるタイプも見つかりました。

暑さ・湿気対策以外にも考えなければいけないことはいくつかあります。

着ぐるみの構造によっては首、手首、足首といったパーツの境目で「素肌」が出てしまう場合があり、子どもの前ではそれだけは避けなければいけません。

部位によってはマジックテープなどで補強もできそうですが、難しい場合には着ぐるみと同じ色のインナーを着る等の対処をしなければいけないかもしれません。

また、子どもたちと触れ合う機会があるキャラの場合、握手などの接触により「手」を感じられてしまうのを避けるために軍手を嵌めるケースも有るようです。

参考にしたものなど

お披露目動画の撮影を依頼したカメラマンの方が偶然にも着ぐるみに造詣の深い方で(そんなことある?)、打ち合わせや撮影の際にこの辺りの話を聞くことができました。

私の場合はかなりのレアケースでしたが、身の回りに着ぐるみに詳しい方がいればその方をあたってみるというのが最も確実だと思います。

「いやいや、普通そんな人おらんやろw」という声が聞こえてきそうですが、個人製作のゆるキャラに限らず考えれば勤務先やサークル等で所持していたり、コスプレ等ゆるキャラ以外の用途で製作している方は思ったよりも身近に居ます。

また、「着ぐるみ 着用 filetype:pdf」などでGoogle検索すると子供の夢を壊してしまいそうな資料がいくつも出てきます。

あまり公開を想定していないようなものも多くあまり表立っておすすめはできませんが、実際の活動を基に作成されているため正直なところめちゃくちゃ参考になりました。

リンクこそ貼りませんが、埼玉県さいたま市と福島県田村郡小野町の資料は少しでも着ぐるみに興味のある方は読んでみて損は無いと思います。

Amazonで唯一見つけたけど、内容が着ぐるみとあんまり関係無さそうな本

書籍など文献はあまり追えておらず、軽く調べた限りでは一般書籍で着ぐるみの運用・保管についてをまとめているような本は無さそうでした。

同人誌では主にケモナー向けの解説本がいくつかあり、着ぐるみ一般論としてどのジャンルでも参考となりそうです。

ただ私の調査が不足しており内容について言及できないため、着ぐるみ同人誌について紹介されている記事を紹介してお茶を濁します。

上記の通り、自治体や製作者によってノウハウが個別に管理・継承されている状態なので、それぞれのノウハウを集めて書籍のような形でまとめれば着ぐるみ界隈のさらなる発展に繋がりそうです。

もし万が一この記事を読まれている出版社の方が居ましたらぜひご一考ください(あまりに無責任)。

インディーズゆるキャラ仲間

私の場合はたまたま着ぐるみに詳しい方から話を聞くことができましたが、中にはなかなかそういった方が見つからず、着ぐるみ購入後の運用が不安でなかなか踏み切れないという方もいると思います。

ケモナー界隈ではコミュニティも確立しており事前に話を聞いたりすることもできそうですが、ただひたすらにゆるキャラを作りたい人が相談できるような場所は見つかりませんでした。

  • 一応、コミュニティの規則に沿っている範囲であればケモナー着ぐるみ界隈の方に聞いても怒られることは無いと思います

テーマパークないし一般企業、自治体といった団体に属しているメジャー着ぐるみと比較して、完全に個人の同人レベルのキャラである我々インディーズ着ぐるみは運用・保管・出演などの知識を自分自身で溜める必要があります。

  • このメジャー・インディーズの分類は完全に個人的見解なので、他のこういった話をしている方とは認識がずれている可能性があります
  • 実際、他の方のブログで「製作せず完成品を購入したままだったり、権利関係の怪しい見た目のキャラ」をインディーズと呼んでいる記事もありました
  • いや個人的に権利関係ヤバいキャラは破門だと思うのでつが、、

そういうわけで、DiscordでもTwitterのコミュニティでもマストドンでも何でもいいのでインディーズゆるキャラが情報共有できる場があってもいいんじゃないかと思いました。

もし万が一この記事を読まれているインディーズゆるキャラの方がおり、さらに上記に賛同いただけるようであればツイッターかメール [email protected] までご一報ください(こっちはマジ)。