※この記事に限らず、画像掲載用に使用していたAmazonのリンクが使えなくなってしまっていたので一部表示がぶっ壊れてます。
改修案は検討中ですがすぐには対応できなそうなので一旦壊れたまま公開して後で直すことにします。
ご無沙汰しております。
最近は創作のモチベーションが別方向に向いていて全く筆が進んでいませんでした。
散財の懺悔
突然ですが、先日Sound Devices MixPre10-IIを買いました(ローン3回払い)。
知っている限りではフィールドレコーディング用途では最高レベルの製品で、192kHz / 32bit floatに対応しており、競合のZoomやTascam 製品と比較しても圧倒的にノイズが少なく、XLR8系統 + AUC2系統 (ステレオ) の最大10系統を同時に録音できるバケモンです。
正直なところ競合のZoom F8n Proと最後の最後まで迷ってましたが、前述のようなスペック差や日本での少数派感、何よりクソ悩んでるタイミングでの新品在庫が復活したことによる運命理論により観念して購入に至りました。
- 運命理論: 何か行動を始める・買い物をする際に、何かその瞬間に起きた (無関係な) 事象にこじつけて行動を起こすこと
- あと正直必要な入力数だと半額のMixPre6-IIでも良かったけど、一向に在庫が回復しなかったので運命が向いていなかった。。
ここからステップアップしようとするとNAGRA VII (100万円)、Sound Devices 888 (220万円)やSCORPIO (280万円) 辺りのリアルガチ商業録音機器クラスになってしまうので、フラグでも何でもなく個人での運用可能機材としては実質的に上限だと思います。
フィールドレコーディング用というには大きすぎる (消費電圧が)
実際に使用してみて確かにMixPre10-IIは物凄いレコーダーなのはわかりました。が、電源供給方法に課題があります。
入力数の少ないMixPre3, 6ではUSB-Cによる5Vでの給電ができますが必要電圧が10-17Vに増加した10では対応しておらず、付属品のみで賄うならACアダプターもしくは単3電池用パックでの運用となります。
持ち運んでの運用の場合は電池一択となりますが、問題は電池の持ちが相当悪く、マイクを4本繋げてファンタム電源を使用するとエボルタでも1時間足らずでバッテリーが切れました。
当然こんな燃費だと運用に限界があり、世の中のオーナーは全員悩まされていると言っても過言ではないでしょう。
Reddit、Gearspace、YouTube、Facebookグループなどどこを見てもバッテリーでの長時間運用に関して議論されています。
巷ではSony Vマウントのバッテリーを利用してDTap ⇒ Hirose 4pinケーブルで給電する方法がメジャーのようです。
業務用ビデオカメラや照明などの用途でバッテリーの遺産がある場合はこの方法で間違いないですが、今からすべて揃えるとするとコスパは良くなさそうです。
また、ソニーLマウントのバッテリーを接続できる公式製品もあります。
ただの変換アダプターなのに約2万円、Lマウントバッテリーを2本繋げるが内部的に並列っぽい (2本繋ぐと片側ずつ使用されるのでなく両方同時に使うので、総使用時間は変わらないが片側を交換しながら使用するような運用が難しい) のでちょっと手を出しづらかったです。
それに結局この方法でもLマウントバッテリーの準備が必須となりますしね。
一般個人がバッテリーの遺産を使用しようとするならばやはりUSBモバイルバッテリーに頼りたいところです。
その場合、通常のUSB規格だと定格5V出力で足りないため、USB PD (Power Delivery)という規格を使用する必要があります。
同一形状で転送速度、電流電圧など仕様がバラバラなことからその功罪が議論に挙がることの多いUSB Type-Cですが、個人的にはこのPDにはめちゃくちゃ助けられています。
昔、当時では相当珍しかった中華タブレット (Windows10とAndroid) を買ったときに、電源供給がDCジャックのみでかつ付属のACアダプタが一瞬で故障したためUSB1.1 5V ⇒ DCジャックのケーブルを買って充電していたことがありました。
当時USB PDなんていう規格も無く、通常のUSB充電器では充電しながら使用するとバッテリーが微減していく有様でした。
そのことを思い返すと、現状の65Wやら110Wやら出る充電器は物凄い発明に思えます。
話を戻すと、USB PDで必要電圧を取り出してHirose 4-pinに変換することができれば最も都合が良いという考えになったという次第です。
調べたらAmazonやアリエクにはそれっぽいケーブルは出ているものの、説明が少なく本当に必要な電力を得られるか分からない上に5,000円ぐらいするので正直あんまり買いたくないです。
- しかもレビューで使えないだの品質が低いだの書かれている
無ければ作らねばならない
ならば己で作るしかないですが、素人がどうやって作れるのかを考える必要があります。
世の中にはPDトリガーケーブル (またはPDデコイケーブル) というたいそう便利なものがあります。
これは機器側ではなくケーブル内で強制的にPD給電をトリガーして任意の電圧を取り出すような機能を持ったものです。
いわばPDという規格をハックしているような形ですが、これのお陰でDC電源しか入力を持たない機器 (ノートPC、据置装置など) に対してUSB-Cで電源供給できるケーブルみたいなものを作ることができるのです。
私は別機器でUSB PDで給電したいものがあり、当時調べている中でこのようなケーブルの存在を知ったところになります (結局頓挫したため記事化予定無し)。
世の中にはPDトリガーケーブル自作キットも存在しますが、今回は簡単化と節約のため既製品をバラして改造する形を取ることにします。
- そして何より、この方法を思いついたのがMixPre10-II使用予定の2日前だったので翌日配送可能な通販サイトで揃えられる方法しか選べなかったため
ここまで書いておいてアレですが、もし真似される方がいましたら自己責任でお願いいたします。
私が用意したのはAmazonで780円の12V用ケーブル (1.5m) と、サウンドハウスで850円のHirose HR10A-7P-4Pです。
USB PDの規格として対応してるのが5, 9, 12, 15, 20Vで、MixPre10-IIは入力電圧10 - 17Vなので12Vか15Vのケーブルを買えば大丈夫です。
- ちなみに元々付属しているACアダプターも12Vでした
元々のDCプラグを確認できる機器も持っていないので確認無しでぶった切ります。
被膜を剥いで、Hiroseコネクタのピンにはんだ付けしていきます。
コネクタの外装はプラグに接続した状態で回すと外れます。
MixPre10-IIのマニュアルによると[pin-4=+, pin-1=-]と書かれているので、4番に赤、1番に黒の線を繋げます。
Zoom製品 (F8n Pro)でも同じピンアサインのようなので電圧が適合していればそのまま流用できそうです。
- Zoom向けの参考サイト: Zoom F8n用の外部電源ケーブルを自作する - Sakai Filmworks
- F8n Proは入力電圧が9 - 18Vなので、他の機器への使用予定が無ければ9Vのケーブルで作った方がよりバッテリーが持つと思います。
はんだ付け後はスリーブを被せて完成です。
一応ケーブルの抜け止め用のイモネジが付いていますが、今回用意したUSBケーブルだと細すぎて意味がなさそうだったので絶縁テープを巻いて補強した上で留めました。
完成後USB-Cの電流電圧チェッカーにて確認したところ12Vが正しく出ており、2系統のファンタム電源を同時に使用した際に約0.7Aが流れていました。
手元のモバイルバッテリーが須くへたっているので実稼働時間の計測は難しいですが、計算上は10000mAhのモバイルバッテリーにて4時間弱は回せそうです。
またバッテリー切れの際には自動で電池駆動に切り替えてくれるので、その際にモバイルバッテリーを交換することでホットスワップもできます。
注意点として、PDのトリガーをかけているのは機器側ではなくケーブルそのもの (正確にはケーブル内部のPD回路) となるので、ケーブルを繋ぎっぱなしにしておくと待機電力を消費し続ける可能性があります。
実際には機器に繋がっていない以上電流はPD回路にしか流れず、低電流のためモバイルバッテリー側が自動スリープする場合もありそうですが。
実地試験
というわけで、ケーブルの試験も兼ねて三重県志摩市の渡鹿野島で録音してきました。
結果としては大成功で、約1時間の録音に際して何の問題もなく完了できました。
4系統のファンタム電源を使用し、10,000mAhのモバイルバッテリーの残量表示100%から開始して終了時には53%の表示で終わっていました。
- バッテリーセルがへたっていて、その後スマホを充電していたら30%から一気に0%に落ちたので信用できる値かは分かりません
宣伝タイム
というわけで、渡鹿野島で録音したフィールドレコーディング音源をBandcampにてリリースしました!
元はAmbisonicで録音したもののBandcampが対応していなかったので泣く泣くステレオに落としています。
上陸してすぐの船着き場と島中央の神社周辺での録音を含めておりますので、試聴だけでもぜひお願いします!