先日フィールドレコーダーのZOOM F3を購入しました。
F3は32bit floatで音が割れない録音ができるすごいレコーダーで、詳細は他サイトの紹介記事に任せますがともかくすごいやつです。
私は元々ハンディレコーダーとしてZOOM H1を持っていました。
USBポートがmini-Bだったり表面が加水分解してベタベタになったりと色々気になる部分はあったものの機能としては普段遣いには十分で、楽器の録音、ラジオ収録、映像撮影時の音声収録など様々な用途で活躍しました。
F3入手後に資金繰りのために泣く泣く手放しましたものの、スマホでなくレコーダーで録音する意義を教えてくれた私にとっての銘機でした。
私にとっては買い替えになりましたが、F3とH1はそもそも種類も用途も異なります。
Hシリーズはハンディーレコーダーで、それ1台あれば録音が完結するような機種です(上位機種だとXLR入力もあります)。
対してFシリーズはフィールドレコーディング用途であり、外部マイクを接続して録音することが前提となっています。
単純なスペックだけで比較するとH1と比べるとF3は数値上ではほとんどの面で優れていますが、上記理由によりF3には内蔵マイクがありません。
ガチレコーディングの場合はもちろんちゃんとしたセッティングで録音する意思はあります。
しかし、普段の散歩に持ち歩く・演奏の本番ではなく練習の録音といった用途の場合はなるべく簡単に済ませたいと思うのも人間の性です。
目次 (2022-10-18追記)
本記事に関する事前知識
ばーっと本文を書いたあとで、特に録音方式について説明が必要そうな気がしてきたので先に
A-B方式 (スペース方式)
狭義では、無指向性のマイクを20-60cmの間隔で並行配置して録音する方式です。
左右の音量差よりもハース効果 (聞こえるタイミングの差で定位を感じる現象) によりステレオ感を得ることが出来ます。
オーケストラやグランドピアノといった巨大な音源に対して効果を発揮しますが、マイク間の距離が離れるほど位相差の問題が発生するのとマイク間の中央付近が薄くなるというデメリットがあります
無指向性でなく単指向性や双指向性のマイクを使う場合もあり、その場合はよりステレオ感が増しより真ん中が薄くなる傾向になります。
X-Y方式
単指向性のマイクの先端を重ねてV字配置で録音する方式です。
A-B方式との一番の違いは、左右のマイクの集音範囲の重なる中央付近が濃くなり、かつ
そのため、話している人や楽器の演奏者にフォーカスを当てつつ周囲の音もステレオで撮ることができます。
その代わり空間的な広がりの表現はA-B方式に劣るとともに、指向性の方向的に左側のマイクが右の音、右側のマイクが左の音を録ることになり、配線がクロスするなどセッティングが少々複雑となります。
ZOOM H1含め、ハンディーレコーダーのデフォルトマイクで採用されていることが多い印象です。
その他の録音方式
他にも、マイクをハの字に110°広げて先端同士が17cm離れるように配置するORTF方式やハの字90°で先端同士の距離が30cmで配置するNOS方式などがあります。
ORTFはフランス、NOSはオランダの放送局で考案された方式で、参照する資料によりA-B方式の派生と書かれていたりX-Y方式の派生と書かれていたり微妙ですが、どちらもステレオ感を出しつつ全体のバランスを整えたいという意図は共通しています。
また、これらとは全く異なるM-S方式という録音方式もメジャーですが本記事では特に出て来ないので割愛します。
気になる方は天下のShureが公開しているMicrophone Techniques for Recording (English) を読んでみてください。
広義のA-B方式 (?)
ここからはWikipediaだと[独自研究][要出典]と付けられそうな内容なので、あくまで本記事内での用語という程度で考えていただければと思います。
特にハンディーレコーダーでハの字に単指向性マイクが配置されている場合にA-B方式と記載されていることがあります。
ではこの用法は出てこないため機器販売時の説明簡略化もしくは実質的な録音効果という
角度や距離はレコーダーにより異なりORTF, NOSの両方式とも同一視できず厳密な名前は付いていないようで、本記事で紹介するiRig Mic XYやCEntrance PivotMic PM1といったマイクでは「左右を入れ替えても使用できるXYマイク」というような説明に留まっています。
かといって記事内で「XYマイクの左右を~」と何回も書くのも冗長なので、以降はハの字をA-B方式とし、厳密なA-B方式をTrue A-B方式と呼ぶことにします。
- ちなみに後述のTASCAM Portacapture X8の付属マイクはTrue X-Y方式、A-B方式対応と記載されており、恐らく狭義のX-Y方式と広義のA-B方式みたいなニュアンスがあると思われる
TASCAM Portacapture X8の公式サイトより引用
録音方式へのレコーダー側での対応およびZOOM F3の状況
(True) A-B方式をはじめ左右にマイクを配置する形式では、見た目通り右のマイクをステレオの右、左のマイクを左に繋げば問題なくステレオ録音が可能です。
それに対して、X-Y方式は見た目の位置とステレオの左右が逆となるため、レコーダーとの接続は逆にする必要があります。
レコーダーによってはソフトウェア側で入れ替えることができるものもあり、今回紹介するミニマイクののように直接接続するマイクでの録音時に役立ちます。
一方、今回の主役であるZOOM F3には2022年10月時点では特にそのような機能はありません。
FXLR入力が2系統あり左右でステレオ入力とすることは可能ですが、ソフトウェア上でステレオを反転することは出来ずX-Y形式での録音の際には配線側を入れ替えて対応する必要があります。
- 一応、録音しながらのモニターをしなくても良ければ後から編集すること前提で音だけ録ることは可能です
先行事例
調べたところ同じような悩みを抱えている人がおり、皆様それぞれ工夫して解決されようとしていたため先行事例として紹介します。
市販マイクの改造
もとぴーさんは普段はストリートピアノの録音を行っている方のようで、F3をポータブルレコーダーとして活用するために市販マイクCLASSIC PRO CGM2の改造を行っています。
改造元がGo Pro向けのXYマイクなので低コストかつ最低限の改造で実現できるというのが1番のメリットです。
デメリットとしては、noteにも記載があるように音質が改造元マイク依存になるため、簡易録音目的とはいえ32bit float / 196kHzの録音を999円マイクに委ねるのは勇気が要りそうです。
また、元の筐体は取り除いてる関係上見た目を整えるのもなかなか難しそうです。
MEMSマイクを使用したオリジナルマイクの製作
YouTubeの映像・サウンド_AsagiMadaraチャンネルさんでは、MEMSマイクという最新のマイク素子を利用して1からマイクを自作されています。
上記動画の概要欄にも記載があるとおりMEMSマイクによるマイク製作は「ShinさんのPA工作室」というサイトにて研究がされており、本マイクもこのサイトの情報をもとに製作されているようです。
動画内では実際の回路等には触れられていませんが、以下のページにて同じ形状のマイクが逆輸入のような形で紹介されています。
MEMSマイクに関しての詳細は次回記事にて紹介予定があるため割愛しますが、上記動画の通り音質は申し分ありません。
こちらは1からの自作となるため市販品の改造よりも難易度が格段に上がります。
また、MEMSマイクは今のところ無指向性のチップがほとんどで、ステレオ録音に向けて単指向性のマイクを作りたい場合にはかなりの工夫を要します。
プラグインパワーマイクをファンタム電源アダプタ経由で接続する
F3にはいわゆるライン入力が存在しません。
入力端子は3ピンXLRのみで、かつプラグインパワーには対応しておらずファンタム電源もしくは自前で電源を取れる機器が必要になります。
プラグインパワーのマイクは小さい物が多く、持ち運びには適していそうです。
そこで思いつくのは、3.5mmのライン入力からXLRへの変換です。
その辺に売っているXLR-3.5mm変換アダプタは配線を変換しているだけなので、電源供給しようとファンタム電源をオンにした瞬間に最大48Vがマイクに流れて最悪ぶっ壊れます。
そのため、それなりにお高いですが以下のようなファンタム電圧を減圧してくれる機能付きのアダプタが必要となります。
ステレオ録音する際は上記アダプタを2つ接続しそれぞれにマイクを繋ぎます。
マイク自身がステレオ出力の場合には更に以下のような変換ケーブルを噛ませる必要があります。
これだけ色々と繋げて録音するのがお手軽かと言われると微妙です。
ここまでするなら変換アダプタ代で安いライン入力付きPCMレコーダーが買えてしまいます。
なんならその安いレコーダーで録音するのが一番楽という身も蓋もない話となるので、この方法はあまり考えないほうが良さそうです。
- 実際にはClippy EM272みたいなプラグインパワー専用のいいマイクを繋ぎたい場合に使われることが多い手法っぽい
普通のマイクをそのまま差し込む
ここからは市販マイクによる解決方法です。
まず思いつくのは、細めのスモールダイアフラムマイクを直接ぶっ刺すという手です。
こちらは結局マイク一式を持ち歩いて都度装着するという手間がかかるのと、何よりマイク間の距離が近すぎてステレオ感が得られなさそうなのであまり意味がなさそうです。
正直モノラルで良いという時はこれでもいい気はします。
CEntrance PivotMic PM1
上記もとぴーさんの別記事でも触れられてるほか、TwitterやRedditでも「このマイクはF3で使えないか?」という話題がたまに挙がっていました。
こちらはCEntrance社のMixerFaceというポータブルミキサー向けのマイクで、公式通販やアメリカ国内のサイトで購入できます。
何と言っても非常に小さく、挿しっぱなしでも持ち運べるぐらいのサイズ感です。
そして左右を入れ替えることでA-B方式とX-Y方式両方で録音できるというのが1番の特長です。
まだ公式のYouTubeチャンネルぐらいでしか音を聴くことが出来ないものの、楽器録音もできるレベルであれば普段遣いとしては全く問題ないと思います。
- 公式の動画がサイト埋め込み出来ないのでリンクでの紹介に留めます
- Audio Minute #15 - Can MixerFace Record Flute?
少々お高い (199.99ドル→2022年10月時点で約28,900円) 上に現状個人輸入しか購入方法が無く、送料・関税が上乗せされるのと輸送のリスクがあるので気軽に試せないのが難点です。
また、後述のとおり端子の向きに致命的な違いがあることが分かったため、F3への導入のためだけに購入するのはあまりお勧めできません。
- 公式サイトでMixerFaceと併せて買うと99.99ドルで購入できるようです
TASCAM Portacapture X8
というかハンディレコーダーとしても使いたい場合は最初からTASCAM Portacapture X8も選択肢に入ってきます。
X8も32bit float録音に対応するレコーダーで、XLR端子も4つ搭載していることからZoom F3やF6のライバル機種としてよく名前が挙げられています。
こちらはペアのラージダイアフラムコンデンサマイクが付属しており、向きを付け替えることでTrue X-Y方式 (狭義のX-Y方式)、A-B方式の両方に対応できます。
ただ、この付属マイクはTRSステレオミニジャックのプラグインパワーのため、性能面でファンタム電源よりも劣ると思われます。
- それこそ「気軽に持ち歩く」という運用では問題ない気もするが、それにしては本体がデカい
ZOOM F3/F6が品薄な期間もこちらは在庫が残っており私の購入候補でもありましたが、電源・メニュー操作・音質にデカめのバグがあるようなので泣く泣く購入を見送りました。
もしかすると現在はファームウェアの更新により解決しているものもあるかもしれません。
今なら購入するとアクセサリーセットを貰えるキャンペーンもやってるみたいです。
Sony PCM-D100
某海外コミュニティで「F3はX-Y形式の設定できないから厳しいぞ」「だったら他の案ないか」「PCM D-100一択」「それはそう」みたいな会話がされてました。
ハンディレコーダーのハイエンド品で、実際プロのフィールドレコーダーの方も他の強い機材とともに必ずこれも持っていってるようです。
PCM録音の場合は最高で192kHz / 24bitですがDSD録音にも対応しており、全く機材を持っていないところからこの1台だけ買って旅に出ても問題ないレベルだと思います。
価格が高いのと、ちょうど今年生産終了して後継機待ちという微妙な期間でタイミングが悪いので、よっぽど安く買えない限りは一旦待ちっぽい気がします。
iRig Mic XYを見つけた
そんな折、別件でIK Multimediaのサイトを見ていたところ、iRig Pro Quattro I/Oなる製品が出ていることを知りました。
こちらはMixerFaceと同じようなモバイルミキサー兼レコーダーで、最高24bit/96kHzに対応した高機能な持ち運び用のガジェットのようです。
このページの中で、なにやら気になる形状の外部マイクを見つけました。
iRig Pro Quattro I/Oの製品サイトより引用
上記PivotMic PM1と同じくXLR端子に直接接続できてX-Y方式、A-B方式に対応できるミニマイクのようです。
どうやら本来はDeluxe版向けのバンドル品のようですが単品販売ページもありました。
79.99ユーロ (2022年10月時点で約11,460円) と先述のPivotMic PM1とくらべてもかなりお安い価格設定です。
調べた感じではiRig Pro Quattro I/O発売時点ではバラ売りしておらずセット販売のみだったようで、今年9月ぐらいからこっそり単品販売が始まっていたようです。
製品画像を見た瞬間に「顧客が本当に求めていたもの」という言葉が脳裏をよぎりました。
そして気付いたら購入ボタンを押していました。
私は過去に散々IKのプラグインを買っておりJampointが80ユーロ分あったので、使用上限の30%分を使い注文しました。
普段からIKの犬やってて良かったです。
調べた感じでは日本の代理店ではiRig Pro Quattro I/Oとのセット販売のみで、今のところバラ売りは個人輸入のみのようです。
海外発送ですが送料はかからず、「EU圏外に送るときは別途関税がかかる場合があるがいいか?」という旨のポップアップが出てくるのみでした。
カタログスペックの比較
形状的にも競合となりそうなのは先に紹介したPivotMic PM1ですが、現状としてどちらも日本語はおろか英語でもレビュー情報が出てきません。
そのため、まずはネットで揃えられる限りのカタログスペックをまとめました。
ついでに近い価格帯でかつ利用者が多そうな単指向性マイクとも比較しています。
PivotMic PM1 | iRig Mic XY | (参考) Behringer C-2 | (参考) RODE M5-MP | |
形式 | ECM | ECM | ECM | ECM |
指向性 | カーディオイド | カーディオイド | カーディオイド | カーディオイド |
電源 | ファンタム 48V | ファンタム 48V | ファンタム 48V | ファンタム 24V 48V |
周波数特性 | 20Hz - 20kHz | 20Hz - 20kHz | 20Hz - 20kHz | 20Hz - 20kHz |
感度 (1kHz) | -45dB | -39dB | -41dB | -34 dB |
最大音圧レベル (SPL) | 140dB | 145dB | 140dB | 140dB |
S/N比 | 74dB | 記載なし | 75dB | 75dB |
等価雑音レベル | 記載なし | 22dBA (A特性) | 19dBA | 19dBA (IEC651) |
重さ (単体) | 39g | 37g | 単体は記載なし | 80g |
出力インピーダンス | 150Ω | 記載なし | 75Ω | 200Ω |
ダイヤフラムサイズ | 記載なし | 0.55” (14mm) | 16mm | 1/2” (13mm) |
価格 (日本円は2022年10月時点) | $199.99 ¥28,900 | €79.99 ¥11,460 | ¥6,580 | ¥24,800 |
iRig Mic XYはあくまで付属品という扱いのためかS/N比など結構重要な部分が記載されていませんでした。
マイクの形式や指向性、周波数特性としては全く一緒で、感度やSPLに差が見られました。
数値上で比較可能な感度と最大音圧レベルに注目すると、スペック上はiRig Mic XYの方が高感度かつ大音量に対応できるようです。
また、流石に比較対象のM5-MPには及ばないものの、C-2との比較ではそこそこいい勝負をしています。
ただし、カタログスペックのみで比較するとC-2とM5-SP間でも感度と出力インピーダンスしか差が無いため、実際の音とは分けて考えたほうが良いと思います。
家に着くまで
注文後確認メールが届いた以降特に発送通知など無く、FedExからのSMSで発送されたことを知りました。
イタリア発送で注文後6日ほどで家に到着しました。
今回は特に関税等もかかりませんでした。
やはり元々バラ売り用の製品でなかったためか、簡素なパッケージで説明書も付属していませんでした。
マイク本体は金属製でしっかりした造りです。
上部のシルバーの部分がネジ式となっており、本体裏面のネジと両方開ければ簡単に分解できます(やらないですが)。
開封もそこそこに早速装着しようとしたところ、衝撃の事実に気が付きました。
なんとF3ではXLR端子間の距離が近すぎてX-Y形式で挿すことができませんでした。
改めて純正であるiRig Pro Quattroの画像を見ると、XLRコンボジャック間の距離がそこそこ空いていました。
ジャックの大きさから推測するにおよそ1.5cm程度でしょうか?
手元のF3で実際に測ったところ0.4mmもありませんでした。
購入前に気付けたかもしれない部分なので迂闊でした、、
気を取り直して、A-B方式では問題なく装着することが出来ました。
XLR端子の向きの関係でロゴは裏側を向いています。
思っていたよりも軸の部分が長く、どことなく昆虫感があります。
風防を着けるとこんな感じです。
風防は2つまとめて被せるタイプで、同じ形状のマイクがあれば流用出来そうです。
本体より横幅が大きいので若干アンバランスですが、かなりタイトに作られており振っても外れなさそうで運用上は問題なさそうです。
重さはF3 (電池込み) の242gと比較するとペア両方合わせて1/3以下で、片手で持っても重量の増加はほとんど気になりませんでした。
むしろ通常運用時のケーブルのほうが重く感じるぐらいで、これなら気軽に持ち運べそうです。
先ほど分解しないと言いましたが、気になったのでマイクカプセルだけちょっと見てみることにしました。
14mm径の単指向性ECM一発で3線運用しているようで、ググっても同じスペックのカプセルは見つかりませんでした。
- サイズ、指向性、表面デザイン等はJLI Electronics社のJLI-140A-Tというカプセルが一番近そうですが背面基板が異なります
余談: PivotMic PM1のジャック方向
iRig Pro Quattro I/Oのジャック間距離を確認した際に、競合として紹介したPivotMic PM1の純正対応先であるMixerFaceはどうか…と思い見てみたところ、距離自体はZOOM F3とさほど変わらなそうでしたがコンボジャックの向きが横になっていることに気が付きました。
MixerFaceの販売ページより引用
改めてよく見てみるとマイク側も併せる形で横向きとなっているように見えます。
Pivot PM1の販売ページより引用。若干分かりづらいけど真ん中の3番ピンの向きがマイクの凸側に来ている
そのため、このマイクを購入してZOOM F3に直接装着しようとするとマイクの向きが上下方向となります。
恐らく干渉はしないため左右のマイクの切り替え自体はできそうですが、A-B形式・X-Y形式にはならずマイクの向きに対する位置関係は同じ・マイク間の縦の距離が変わることになります。
F3ごと傾ければ擬似的に再現できなくもなさそうですが、それで実際に運用するのは非現実的と言えます。
逆に、上下の音を気軽に録音したいという状況には非常に適していると思います。
- というよりも、端子が横向きだとMixerFace本体を使うときに干渉するケーブルとかが出てきそうだけど大丈夫なのか?
というわけで先の話題に戻ると、X-Y方式で使えなかったとはいえiRig Mic XYが現状唯一の選択肢なのかなと考えています。
もし他に良さそうな製品があったら教えてください。
音
以下、想定通りに接続できたA-B形式での録音サンプルと感想です。
セッティングはミニ三脚で風防付きで、各音源はすべて192kHz/32bit floatで録音しました。
出力は96kHz/32bti floatで、1番目の雨音はカット編集のみ、2番目の公園の方は少しイコライザとノイズリダクションをかけています。
まず、当たり前ですが普通にマイクとして使えました。
マイクを挿しっぱなしで鞄に入れておけば取り出して10秒で録音開始できるのがこのセッティングの強みです。
音の方は、ほどよくステレオ感が出ててなおかつある程度いい音で録れてる
高音(鈴虫の音色)が若干刺さる気がするのと、感度の高さからかホワイトノイズ感が出てる気もしますが後からどうにかなる範囲だと思います。
直近で楽器録音のタイミングが無かったので機会があれば試して用途思います。
マイクの金属メッシュを挟んですぐマイクカプセルなので、単体での耐風性能はかなり弱めです。
屋外で録音する際は風防が必須となりそうです。
所感
良かった点
- 思ったよりも長かったものの十分小さいし軽い
- 純正の風防付きで別に購入する必要が無い
- それなりにステレオで録れて音質も問題ない
- まあまあ安い
微妙な点
- X-Y方式で接続できない(そもそもF3が対応してないからそこまでショックは無い)
- 日本で買うには現状個人輸入しか無くおすすめしづらい
X-Y方式で使えなかったのは想定外でしたが、それでもこのサイズでステレオ録音できるというのは非常にありがたいです。
価格も高級マイクほどではないため付けっぱなしで持ち運んでも心が痛くないのも良いポイントです。
そりゃもちろんちゃんとマイクを2本立てたりハイエンドのPCMレコーダーを使った場合よりは劣ります。
ただあくまで「気軽さ」に焦点を当てた場合には非常に
ここまで色々考えなくてもZOOM純正のミニマイクさえ出してくれればすべて解決するのですが、そこまでやるとHシリーズの存在意義が無くなるし実現しなさそう、、と勝手に思ってしまっています。
もしZPC-1みたいなシリーズでF3に (欲を言えばF6等他機種にも) 取付可能なミニマイクを出してくれたら言い値で買います。
- もしくは、せめてファームウェア更新でステレオの反転機能実装だけでも…!
余談: 無理やりX-Y形式で使える
注意
そもそもが純正でない組み合わせでの話でしたが、ここから先は機器側・マイク側両方とも故障する可能性がある使用方法のため試す場合は完全なる自己責任でお願いします。
実は、以下のような半差しの状態でも端子にギリギリ触れているためF3側で入力を認識できました。
端子の破損、ショートや落下の危険性だけでなく、そもそもカプセルが近すぎてX-Y方式のメリットが出ない可能性もあります。
また、ZOOM F3上ではステレオの反転が出来ないのでヘッドホンを逆に装着してモニター→PC上の編集で反転 のような面倒な手順が必要となります。
そこまでしてやるなら最初から別マイクを準備して収録したほうが良いと思うか、それでもなお荷物の少なさに魅力を感じるかはその人次第かなぁと思います。
次回予告
記事中でも触れた通り、MEMSマイクについて実際の作例とともに紹介していこうと思います。