今年の6~10月ごろに会社で10年に1度の大繁忙期が到来し、ブログを書く余裕もネタを探す暇もありませんでした。
最近ようやく落ち着いたので少しずつ投稿を再開できればと考えております。
- 本当は11月から再開したかったのですがブログ移転とかでまたバタついてました
ついでに、時間ができたので人生二度目の手術を行いました。
事の発端
発端というほど根深い問題でも無いですが。
今年の8月に不注意で左手をガラス片で切ってしまい、救急で6針ほど縫う怪我を負いました。
切った箇所は親指の付け根(人差し指との間)で、親指に沿う形でザックリいってしまいました。
幸い傷口自体の快復は順調で、1週間で抜糸をして以降は見た目ではあまり分からないぐらいまで塞がりました。
また、怪我直後から指が動かないというようなことはなく、多少は筋が張るような感覚が残るものの物を掴んだり動かしたりといった動作は出来るまでに復活しました。
ただ、全部の機能が改善したわけではなく、親指の内側半分(手のひら側から見て左半分)における痛覚を含む触覚が一向に戻りませんでした。
怪我の直後はアドレナリン等もあり?全く気が付かなかったのですが、数日経って落ち着いて怪我自体が回復してきても触覚が戻らず、日に日にめちゃくちゃ不安になりました。
抜糸のために皮膚科に通院した際に相談したところ、神経が切れていなくてもダメージを受けた場合はしばらく感覚が戻らないらしく、この時点では切れているのか正常なのかの判断はつき辛いとのことでした。
通常神経はダメージを受けた箇所から1日約1mmの速度で回復するらしく、指の付け根から指先まで5cmだとするとおよそ50日、2ヶ月弱かかるそうです。
また、傷口は回復の過程で瘢痕という固くなる状態となり、そこに神経を巻き込んでしまうと傷口自体の治癒まで神経が治りづらいこともあるようです。
そのため通常は一旦様子見という判断となることが多いものの、必要であれば大きい病院を紹介することは可能だという話を受け、今後も楽器を弾けるかということで頭がいっぱいだった私は即答で紹介状をお願いしました。
- ちなみに感覚のない部分に痛みを感じる場合は幻肢痛の可能性もあるため、その場合にはすぐに向精神薬が処方されるらしい
- 私が大昔に調べたときは目の錯覚のような形で脳を騙して痛みを引かせる方法が載っていたが、流石に現代では薬が1番ということか
その後大きな病院に行き、数ヶ月経過観察の上で感覚が1mmも戻らないため手術ということになりました。
楽器と怪我
私の普段演奏しているコントラバスという楽器においては左手親指というのは非常に微妙な部位で、動きさえすればギリギリ楽器が弾けなくない事もないような指であると思います(個人の感想です)。
左手親指は指板の裏面に押し当てて反作用的に指板側の人差し指-小指が弦を押さえるサポートをしている、と理解しています。
私の場合は感覚が無いことにより親指の第一関節より先で繊細な力加減が出来ない状態だったため、ネックに当てる部分を親指の先から第一関節の真上まで下げることによって親指付け根でのコントロールだけで調整できるようにしてワークアラウンドとしました。
- その副作用として、普段かかるはずのない部分に力が入るからなのか感覚がないが故なのか分かりませんが付け根〜第一関節の間の筋が楽器を弾くたびに激痛でした
左手親指だったのでまだ何とかなりましたが、左手の親指以外もしくは弓のコントロールで酷使してる右手親指・小指あたりを怪我していたら冗談抜きで楽器人生終わっていたと思います。
不謹慎ながら怪我をするなら右手人差し指・薬指が1番影響が少なく、時点で左手親指・小指ではないかなどと考えていました。
- もちろん利き手の人差し指なんか怪我したら他の日常生活が全部終わります
(そもそもこんな大怪我をする母数があまり多くなさそうですが)身の回りに手を怪我したという楽器奏者が今まで全くいなかったので
本記事を残すことにした理由の一つでもあるので、今後手を怪我された方の参考になれば幸いです。
- この辺りの話はめでラジでも話しています
手術で何をしたのか
大きな病院の方ではまずエコーによる神経の状態確認を行いました。
怪我の跡 (断痕) が神経の真上まで到達しており切れているか切れていないかの断言ができず、確認するにも一度開いてみないと分からない状況であると言われました。
ただ、術後の治りから見てもし切れてなくても神経繊維がおかしくなっている可能性があるため、手術するならば神経再結合が必要ということになりました。
くっつける際にも、長さが足りていれば普通に結べるらしいのですが、距離が離れ過ぎている場合は間に人工神経を挟むことで距離を稼ぐそうです。
- 人工神経でも届かない場合は脚の腱から持ってくるのが一般的
- ……というのは事例として聞いたことがあるけど、その場合はあくまで「持ってくる」ので脚の一部感覚が消失するらしい
- 説明の資料に「腱の神経を『犠牲』にして」とか書いてあって怖くて泣いちゃった
やはり人工神経を使うと術後の評価が結合に比べて低いらしいですが、そもそも神経同士の縫合でも必ずしも完璧に復旧するわけでは無いそうです。
曰く、期待値として感覚が7-80%戻ればよくて、90-100%戻れば万々歳(=あまり期待しすぎるな)ということを言われました。
まあ薄々そうなのかとは思っていましたがいざ完治しない可能性を言及されると苦しくなりますね。
手術自体は局所麻酔で数時間で完了するような内容のため日帰りもできなくはないものの、大事をとって1泊2日で入院することにしました。
この時点で怪我から2ヶ月半が経過していましたが、数ヶ月程度であれば手術結果に影響せず間に合うそうです。
入院までの流れ (2021年令和最新版)
入院の1週間前に入院前の精密検査を行いました。
検査は怪我に依存しない一般的なもの(採血、検尿、胸部レントゲン、心電図)と今回の手術特有のもの(左手のレントゲン、エコー)があり、合計2時間ほどかけて回りました。
検査内容を全く知らないまま当日受け、思ってたよりも検査項目が多くビビってましたが、前日に酒ガブ飲みなどしてなくて助かりました。
- 結局肝臓で引っかかって入院まで禁酒を言い渡された
上記検査を終えた後で手術当日の説明、および入院へ向けた手続きをを受けました。
一応趣味で楽器を弾くことも伝えたところ、最低6週間(手術からだと年内中)は弦を押さえるなというお触れが出ました。
本番前に手術とならずマジで良かったです。
PCR検査
11月時点でご時世的に落ち着いていたとはいえ、やはり医療機関なのでPCR検査でのコロナウイルス陰性証明が必須でした。
そのため入院前日の午前8時に病院へ行き、鼻に綿棒を流し込みました。
コロナの検査は今までやったことがありませんでしたが、やられた所感としてはインフルエンザの検査とほとんど同じでした。
痛みとしては、鼻にパンパンに詰まったガーゼの抜去>>>>>>>>>>>>>コロナのPCR=インフルエンザの検査>耳鼻科で鼻水吸われるやつ といった感じです。
検査をパスして発熱等の症状もなかったので翌日の入院がここで確定しました。
入院〜手術まで
当日は朝10時ごろに病院に到着しました。
パジャマを持ってこい!と言われてたので病院併設の店でレンタルして小脇に抱えながらナースステーションへと向かいました。
検温等を行った後で入院部屋に通され、早速パジャマに着替えようとしたところ「めでたいさん (仮名) はすぐ手術なのでこちらを着てください」とのお達しを受け手術着に着替えました。
丈の長い作務衣みたいな形でズボンは履かず、肩口等がボタンで開ける感じでした。
あと紙パンツも穿かされました。
入院した部屋は6人部屋だったのですが、私以外はどうも外科ではない (循環器科?) ような雰囲気を感じました。
後から聞いた話で、外装工事の影響で数日後に全員移動しなければいけなかったようなので、1泊2日で決まっていた私が穴埋めで割り当てられたのではないかと思います。
- 皆様割とご高齢でかつ長期入院らしく、聞こえて来る会話が割と重かった……
手術着に着替えたのが12時ごろで周りに昼食の匂いが立ち込める中で、手術を控えた私は飲料しか飲めず、ベッドでダラダラYouTube見て過ごしていました。
手術
正確なタイミングは忘れましたが確か14時ごろに直前のアナウンスがあり、14時半ごろに手術室へ向かいました。
歩いてる途中に付き添いの看護師に「帰りは車椅子になりますよ」と言われ、部分麻酔なのになぜ……?と思った記憶があります。
手術室に到着し、自分で手術台の上に横たわりました。
前回は全身麻酔で到着即麻酔ガンギマリだったので見回す時間も余裕もありませんでしたが、
辺りをキョロキョロ見渡しながら事前の準備をやってもらっていると、医師が研修医を引き連れてやってきました。
準備中に先生と学生が雑談してるのを聞いて、若い先生と学生の距離が近いのはどこも共通なのかと思ったりしてました。
- 私の研究室は……ウッ頭が
以下手術の話です。
肩口に神経を刺された瞬間に貧血のような感覚になり、心拍計や血圧モニタでも検知されたらしくブザーが鳴ってました。
その脇で皆様冷静に「あー迷走神経反射ですね」みたいな事を話していて、みんなもっと心配して!!って思ってました。嘘。はえ~これが迷走神経反射か~って思ってました。
その後血圧が安定してから残りの麻酔の投与?をしていき、最後の方で「このあとちょっと痛いかもしれないですよ」と言われ、直後、左腕がビクンッ!と一回痙攣し、YouTubeで見た魚の神経締めを思い出して「あ!左腕終わった!」と思ってちょっと焦りました。
麻酔が効いたのを確認し手術本番に入るのですが、ドラマでよく聞くセリフが聞こえてきました。
「メス!ガーゼ!カミソリ!神経切断機!」
ししし、神経切断機~~~~~~~~???????????
手術の間は顔と左腕の間にセパレーションがかけられて見えていないのですが、上の電球に赤い何かが反射しており、開かれてるのかなぁ、と思いを馳せていました。
無事神経が露出したらしく、また会話が聞こえてきました。
「これがカリフラワー状の神経線維です」『おお~~~』
なんか珍しい状態だったっぽいのに全く見えなかったので、術後に何かレポートや原稿でも書かれていれば見せてくれないか打診しようと思います。
その後手術が終わり、撤収作業が進められているのですが、感覚的に左腕がずっと吊るされている感覚のままで、いつ下ろすんだとずっと思っていました。
吊るす棒みたいなものも撤去され、あれ?と思った刹那にセパレーションが外され、見てみると吊るされておらず横たわった左腕が目に入り、も…漏れの左腕~~~ってなってました。
最後、点滴のついたままの右手で動かぬ左腕を抱えながら車椅子に乗り込みました。
車椅子があって本当に良かったと心から思います。
帰り際に「トイレに行くときは右手で抱えてぶつけないようにしてね」と言われて、いや行けるか〜〜〜い!!!!と心で思ってました。
小便器でも個室でも越えなきゃ行けない壁があまりに多すぎます。
手術の夜
手術後最初に訪れた試練は夕飯でした。
前日夜から何も食べておらず非常に空腹でしたが、割り箸を割る・ご飯を食べる
流石に鼻の手術後の呼吸不能食事に比べたらよっぽど食べやすかったものの、左手の有り難みを痛感しました。
失って初めて気づく……と書きかけましたが腕の有り難みは普通に毎日実感してました。
- あと今回の病院の方が心なしか食事が美味しかった気がする
術後に医師から「神経ブロック麻酔は効きがかなり長引くけど不安にならないでね」などと言われていて、言われた通り消灯時間を過ぎても全然感覚が戻りませんでした。
不安になるというよりは単純に片腕が文鎮化した状態での就寝が難しくあまり眠れませんでした。
基本仰向けで腹の上に乗せておいて、落ちたら都度上げ直すのいうのを繰り返してました。
消灯後も割と自由だったのでMリーク見て時間を潰してました。
23時の点滴交換までは確実に起きてて、その後寝たっぽいですが4時過ぎには目が覚めてしまっていました。
4時の時点で7割戻っていたのでそのまま二度寝した気がします。
- このタイミングで初めて鷹狩りに行った気がする
退院まで
朝食を食べ終わり少ししてから、朝10時過ぎぐらいに担当医師に経過を見てもらいました。
部屋まで来てもらえるのかと思っていたら通常の通院時と同じ待合場所での待機となり、手術着+包帯ガチガチ男が来たということで空気がピリついた気がします。
そこで担当医師+研修医1人に包帯を外してもらい、18時間ぶりに親指と対面するかと思ったのもつかの間、そのまま金属板の骨子をあてがわれ再度包帯でグルグル巻かれました。
曰く、親指を内側に丸めて神経をゆるめることで長さを稼いで結んだらしく、術後1週間は指を伸ばしてしまうと神経や傷口が切れてしまうかもしれないとのことで、1週間は絶対に親指に負荷をかけてはいけないという話でした。
それは1週間で解決するのか?とも思いましたがどちらにしても安静は必要だということは理解しました。
その後、部屋に戻り私服に着替えて帰宅となりました。
パジャマは結局未開封のまま業者に回収されました。も、漏れの500円、、泣
術後1週間
翌平日から仕事に復帰し、キーボード操作が若干不便なこと以外はまあまあ普通にこなすことができてました。
通常のキーボードにおいては左手親指にはスペース・Winキーぐらいしか割り当てていなかったので、そこだけ右手側で代用した感じです。
怪我したタイミングでは親指は一応外に出る形で固定していたため、指の関節は動かせずとも手首の返しでキーを押すことは出来ていたのが、握り込んだ状態で固定したために出来なくなった
- プラ棒か何かで補助用の第六の指を作るのもアリだったかなぁ
ただ、プライベートで使用している左右分割キーボードInfinity ErgoDoxでは物理的距離から簡単に右手で代用するわけにいかず、一時的にキーアサイン自体を変える学習コストと天秤にかけた結果泣く泣く左手人差し指出張で凌ぐことにしました。
左右分割キーボードを含むエルゴノミクス・人体工学という特徴は両手が健康な人だけが対象のものなんだなぁ、とか考えたりしてました。
その他日常生活でも不便なことはまあまあありましたが、怪我時点でほとんど経験していたためまあまあでした。
強いて言えば包帯バチバチのせいで袖が通らない服があったぐらいかなぁと思います。
1週間後に再度病院へ行き、そこで鉄板が外され抜糸を行い、今度こそ親指と再会しました。
- 糸外すときに医師が「痛いでしょ~~ごめんね~~」みたいに声かけてきてちょっとサイコを感じた
1週間折り畳められてる+神経はまだ復活してないという状態の親指は力を抜いた状態でも自動で広がらず、しばらくの間めちゃくちゃ違和感がありました。
今はどうなってるの
術後すぐに投稿しようと思って頑張って書いてたのに結局年を跨いでしまいました。
本項執筆時点 (2022-01-02) では、ひきつれはまだ残っているものの傷口は完全にふさがり、元々の9割ぐらいは広げることが出来るようになりました。
肝心の神経も、実際まだ全然ですが手術前に触覚が止まってた部分より前進している気がしなくもないです (微差ゆえ本当に治ってるか分かってない)。
ともかく6週間は経ったのでちょっと楽器を弾いてみようかとは思います。
本記事を書くために5年前に書いた手術記事を読み返したらなんか言い回しとかが2000年代前半のインターネットみたいな感じで苦しくなりました。
神経だけでなく読者の心も繋げられるようにしたいですね←おい!藁